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健康アドバイス

胸郭出口症候群
                 ツカザキ記念病院 副院長 住本 武弘
 
 診療科別分類では整形外科や脳神経外科の疾患にあたるかも知れませんが、上肢のシビレや痛み、頸部痛、頭痛などの訴えで当科を受診される患者さんの中に、これが原因であろうと考えられる方が少なからずおられるように思われますので、今回これについて話をさせていただきます。

 まず‘胸郭出口‘という名称ですが、簡単に言いますと、これは上肢への神経(腕神経叢)や血管(鎖骨下動脈や鎖骨下静脈)が体幹(胸郭)から出て行く場所のことで、図の如く、斜角筋(前・中斜筋)と肋鎖間隙(第一肋骨と鎖骨の間)で囲まれた部分です。そして、この部分が何らかの理由で狭くなり、頭頸部や肩・上肢をある特定の位置にもっていった際にその部分がさらに狭くなり、このために神経や血管が圧迫されることによって出現する症状を呈する疾患が”胸郭出口症候群”ということになります。神経が圧迫されると痛みやシビレを感じ、動脈が圧迫されると血流不足の症状(腕がだるくなったり、強い場合には手指の色が蒼白になったり)がみられるようになる訳です。症状の程度は様々です。

 昔から‘なで肩の若い女性に多い‘と言われていますが、このような方は肋鎖間隙が狭く、頸部周辺の筋肉の発達が良くない場合には腕神経叢が腕の重みに耐えかねて引っ張られて炎症が引き起こされやすいからと考えられています。また、筋肉質で頸の短い男性では、筋肉を含む周囲の組織で腕神経叢や血管が圧迫されるために、特に配管業や電気業のように狭い場所で不自然に腕を用いる作業ではその圧迫が反復的に強くなるために、炎症が促されて症状を呈しやすいとされています。私が唱和61年に勤務していた大阪の某病院ではこのような男性の患者さんが多く、脳神経外科学会の近畿地方会で発表した症例では、手術所見で前斜角筋の第一肋骨への付着部が硬く索状化して腕神経叢を圧迫していました。

 私は、患者さんの訴え・症状・病歴より‘この疾患の可能性があるな‘と考えた際には、必ず、その診断テストであるライトテスト(座った患者さんの背後から、肘を90度曲げた両腕を、その両手を関節部で橈骨動脈(親指側)を触れながら挙げていって脈が触れなくなるか否かをみる。脈が触れなくなれば陽性。)を行うようにしています。これらは決して難しい手技ではありませんので、皆さんも一度試していただいたらと思います。ただ、ここで大事なのは、このような症状があり、診断テストが陽性であっても、必ずこの疾患であるとは限らないことで、やはり、MRIのような検査で頭頸部の諸疾患(脳梗塞、脳・脊髄腫瘍、頸椎椎間板ヘルニアなど)を除外しておくことが重要です。

 そして、この疾患であると診断された場合の治療ですが、まずは”胸郭出口”が狭くなるような姿勢(例えば、前かがみの姿勢でパソコンを扱う、バスや電車に乗った際につり革を持つ、など)を長くとらないようにしたり、重い物を持ったり、挙げたりしないようにすることです。そして、”胸郭出口”を形成する筋をほぐすような体操(肘を曲げた腕を肩関節でゆっくりと回す)も良いと思います。それでも今一の方は、鎖骨の上の窪みへの消炎・鎮痛の外用剤の貼付や塗布、筋肉をほぐす薬(筋弛緩剤)の服用も有効であると思います。日常生活で不便を感じるほどに強い症状があり、保存的治療(体操や薬剤)では効果が得られない場合、また、解剖学的異常(例えば、頸筋(第7頸椎に、普通は存在しない肋骨のような骨がある))があって、保存的治療の効果が期待できない場合などでは、確定診断の後に、手術(前斜角筋を第一肋骨から切離したり、第一肋骨を切除したりして。”胸郭出口”を広くする、頸肋を切除する、など)が考慮されることもあります。

 今回は「健康アドバイス」ということで、‘肩凝りが強い、頸部が痛い‘などの症状がある場合には、この疾患も念頭において、日常生活での姿勢の注意や体操を行っていただき、それでも、どうも症状の改善が思わしくない、手のシビレを含む他の症状もあるという時には、早い目に病院を受診していただくことをお勧めしたいと思います。

by Vitamine-sanei | 2008-07-02 22:50 | 健康アドバイス

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